家族は構成員の選択が出来ない。これが夫婦ならば、両性の合意によって形成されるが、親は子供を選べないし子供も親を選べない。なのに、夫婦は離婚できるのに家族の解散は出来ない(本当は出来るのかもしれないが、一般的ではない)。これはとても理不尽だと思う。
一家心中とか親殺しなどは、家族の中で世界が完結してしまうので起こるように感じる。むしろ個人が家族に押しつぶされないように、「家族なんて暫定的に同居しているだけの他人で、いつでも出てって良い」としたほうが、いいのではないか。
幼児虐待も「自分の(自分に属する)」子供だと思うから起こるのではないか(少なくとも要因の一つであろう)。子供は一人の人間で、親は一時期預かっているだけの存在であることを自覚する必要がある。また、家の中は一種の密室で、親は生殺与奪権を持つ強者であることも、充分に意識するべきである。
またこの特集では下村博文と稲田朋美が家族の価値の回復と、その手段のひとつとしての尊属規定の復活を主張している。尊属規定を簡単に言うと、「尊属(自分よりも代が上の親族。親や祖父母)に対する犯罪には厳罰を処す」となる。卑属(自分よりも代が下の親族。子供や孫)に対する犯罪には、特に規定はなく、通常の犯罪として裁かれる。
これは、二重におかしな理屈である。
まず、家庭内犯罪の抑止力としての厳罰化を求めるのであれば、「親族規定」として身内に対する犯罪全般を厳罰化するべきだ。幼児虐待は尊属規定に該当しない。第二に、明らかに憲法に反している(尊属規定でも「親族規定」でも違憲であることには間違いがない)。
「第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
ここには法の下の平等が明記されている。法で差別を規定することがいかにナンセンスか、それこそ子供でも分かるはずだろう。親であろうと子であろうと、見知らぬ他人であろうと、人権がある人間なのだ。尊属規定に対する司法の判断もある。
尊属殺重罰規定違憲判決
http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~suga/hanrei/17-1.html
殺人の被害者が犯人の直系尊属である場合には、これを、他の者が被害者である場合に比し一層厚く保護する趣旨に出たものではないとしても、少なくとも右規定により、殺人の犯人が被害者の直系卑属である場合には、他の者が犯人である場合に比し重刑を科せられるから、殺人犯人として刑罰を科せられる関係において直系卑属は他の者に比し不利益な差別を付されていることは明白である。
尊属殺人重罰規定違憲判決
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/sonnzokusatujinhannketu.htm
普通殺のほかに尊属殺という特別の罪を設け、その刑を加重すること自体はただちに違憲であるとはいえないのであるが、しかしながら、刑罰加重の程度いかんによっては、かかる差別の合理性を否定すべき場合がないとはいえない。すなわち、加重の程度が極端であって、前示のごとき立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化しうべき根拠を見出しえないときは、その差別は著しく不合理なものといわなければならず、かかる規定は憲法14条1項に違反して無効であるとしなければならない。
この観点から刑法200条をみるに、同条の法定刑は死刑および無期懲役刑のみであり、普通殺人罪に関する同法199条の法定刑が、死刑、無期懲役刑のほか3年以上の有期懲役刑となっているのと比較して、刑種選択の範囲が極めて重い刑に限られていることは明らかである。もつとも、現行刑法にはいくつかの減軽規定が存し、これによって法定刑を修正しうるのであるが、現行法上許される2回の減軽を加えても、尊属殺につき有罪とされた卑属に対して刑を言い渡すべきときには、処断刑の下限は懲役3年6月を下ることがなく、その結果として、いかに酌量すべき情状があろうとも法律上刑の執行を猶予することはできないのであり、普通殺の場合とは著しい対照をなすものといわなければならない。
最後に、僕は家族が有害無益なものだと言っているわけではないことをご理解いただきたい。家族制度にも有用性はもちろんある。それを認めるのにやぶさかではない。
*これについては以下のような反論もある。
http://pandaman.iza.ne.jp/blog/entry/515559/
要するに国の治安がよくなり殺人発生数が減れば減るほど、
面識のない人間同士の殺人数が大きく減少していき、
そして家庭内殺人や知人同士の殺人数が小さく減少していき
その減少格差から全殺人数の中の家庭内殺人比率が上昇していくというわけです。
非常に語弊のある言い方ではありますが、全体殺人数の中で家庭内殺人の比率が高まっていくのは「悪くない傾向」だったりします。



